糖尿病とは

糖尿病とは

糖尿病とは、インスリンというホルモンが分泌されにくくなったり、身体に作用しにくくなったりすることで、血液中のブドウ糖の濃度が高くなって血管が障害されていき、さまざまな合併症を引き起こしていく病気です。尿にブドウ糖が漏れて甘い匂いがすることがあり、糖尿病と名付けられました。原因としては、自己免疫疾患などでインスリン分泌細胞が破壊されてインスリンが分泌されにくくなるものや、遺伝的要因に過食や運動不足といった悪い生活習慣が重なることでインスリンが作用しにくくなるものなどが挙げられます。病気の初期は自覚症状がないことが多いのですが、放置されているうちに血管の障害が進んでいき、目が悪くなって失明したり、腎臓が悪くなって人工透析が必要になったり、心臓病や脳卒中になったりします。治療には食事療法、運動療法、薬物療法があり、3つを上手く組み合わせることが大切です。

糖尿病の原因

食べ物や飲み物に含まれる糖質は、身体の中で消化され、ブドウ糖となり、小腸から吸収されて血液に入ります。その後、膵臓が反応してインスリンというホルモンを分泌し、インスリンの作用でブドウ糖が全身のさまざまな細胞に取り込まれエネルギーとして利用されます。糖尿病は、このインスリンが分泌されにくくなったり、作用しにくくなったりすることで発症します。

インスリンが分泌されなくなる主な原因は自己免疫疾患であると言われており、過去のウイルス感染がリンパ球の働きをおかしくし、膵臓にあるインスリン分泌細胞を破壊してしまいます。こうして発症した糖尿病を1型糖尿病と呼びます。

日本人は遺伝的にインスリンの分泌が少ないのですが、ここに過食や運動不足、肥満、ストレスが重なることでインスリンが作用しにくくなり、糖尿病が発症してしまうことがあります。これを2型糖尿病と呼びます。日本の糖尿病をお持ちの方のうち9割以上が2型と言われています。

このほか、遺伝子の異常や、ほかの病気、薬剤、妊娠が原因となることもあります。

糖尿病の症状

主な自覚症状としては、以下のようなものが挙げられます。ただし、2型糖尿病の初期には認めないことが多いです。

多尿 尿にブドウ糖が漏れる際、浸透圧の兼ね合いで水分もたくさん出てしまうため、尿の量が増えます。
口渇、多飲 多尿で脱水になるため、のどが渇き、水分をたくさん飲みたくなります。
倦怠感 ブドウ糖をエネルギーとして利用しにくくなるため、疲れやすくなったり、だるさを感じたりします。
体重減少 ブドウ糖を利用できない代わりに筋肉や脂肪を分解してエネルギーに換えるため、体重が減ります。

糖尿病になり、血液中のブドウ糖の濃度が高い状態(高血糖)が続きますと、血管が障害されたり、ブドウ糖が変化した物質が神経細胞に蓄積したりし、さまざまな合併症が引き起こされていきます。以下のようなものが挙げられます。

網膜症 目に入った光は、奥にある網膜に当たり、その情報が脳に伝えられます。網膜には細い血管が張り巡らされており、高血糖によってこの血管が障害されて症状が出るものを糖尿病網膜症と呼び、視力が低下したり、失明したりします。
腎症 腎臓は、血液中の老廃物をろ過して尿を作る臓器です。身体から老廃物を取り除いたり、余分な水分を捨てたりといった、生命を維持するうえでとても大切な役割を担っています。腎臓の中には細い血管がたくさん存在しており、高血糖によってこの血管が障害され、腎臓の役割を果たしにくくなっていくものを糖尿病性腎症と呼びます。糖尿病性腎症になると、こむらがえりやむくみが起こったり、人工透析が必要になったりします。
神経障害 神経を栄養している細い血管が高血糖によって障害されたり、ブドウ糖が変化した物質が神経細胞に蓄積したりすると、神経の働きが悪くなっていきます。その結果、手足がビリビリして眠れなくなったり、けがや心臓発作に気づかず治療が手遅れになってしまったり、血圧がうまく調整されず立ちくらみが起きたりといったことが起こります。
動脈硬化 上記の合併症は細い血管が障害されることで引き起こされるものですが、比較的太い動脈も壁が硬くなったり、脂肪の塊のようなものが溜まったりし、心筋梗塞や脳卒中、足の壊死に発展することがあります。

糖尿病の検査

糖尿病の検査として一番に挙げられるのは、血液検査で調べる血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)です。血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度のことで、健康な人の空腹時血糖値は70~100mg/dLです。HbA1cとは「ヘモグロビンのうち糖が結合したヘモグロビンの割合」のことで、過去1~3か月の平均的な血糖値を反映しています。血糖値よりも食事や運動、ストレスの影響を受けにくい指標であるため、合わせて参考にされます。また最近は、HbA1cと同様の指標としてグリコアルブミンもよく検査されています。グリコアルブミンとは、アルブミンという蛋白質にブドウ糖がくっついたもので、過去2週間~1か月の平均的な血糖値を反映しています。治療を開始したのち、HbA1cはゆっくりと変化していきますが、グリコアルブミンは変化が大きく、患者さんが治療の効果を実感しやすいというメリットがあります。

血糖値とHbA1c、グリコアルブミン以外の血液検査として、インスリンとCペプチドも挙げられます。インスリンが出ている量を調べることで、「血糖値が高いのにインスリンが出ていない」であるとか「インスリンがたくさん出ているのに血糖値が高い」であるといった、糖尿病の詳しい状態を把握することができます。Cペプチドとは、膵臓からインスリンが分泌されるときに一緒に出てくるタンパク質で、注射で投与されたインスリンを含めずに、自分の膵臓から分泌されたインスリンの量だけを推測することができます。

糖尿病そのものの検査ではありませんが、関連がある検査として以下のようなものが挙げられます。

体重
血圧
肥満になるとインスリンが作用しにくくなるため、糖尿病の発症や進行、治療の効きにくさに関係します。また、高血圧は糖尿病と同様に血管を障害するため、合わさることで合併症が起こりやすくなります。



コレステロール
中性脂肪
脂質異常症は糖尿病と同様に血管を障害するため、合わさることで合併症が起こりやすくなります。
尿素窒素
クレアチニン
合併症のひとつである腎症について調べることができる検査です。
尿検査 合併症のひとつである腎症について調べることができる検査です。
アキレス腱反射
振動覚
神経伝導検査
心電図
合併症のひとつである神経障害について調べることができる検査です。
眼底検査 合併症のひとつである網膜症について調べることができる検査です。
頸動脈エコー
胸部レントゲン
血圧脈波検査
合併症のひとつである動脈硬化について調べることができる検査です。
フットチェック
フットケア
糖尿病をお持ちの方の足は、血管障害による血流低下と、免疫機能低下による感染のしやすさが合わさり、ちょっとしたきずが治らなかったり、むしろどんどん悪くなっていってしまったりすることがあります。足の切断が必要になってしまうこともあり、これを予防する目的で定期的に足をチェックしたりケアしたりします。
歯科診察 糖尿病になると、高血糖によって歯を支える骨の吸収が促進されてしまい、歯周病になりやすくなります。また、歯周病を治療することで、糖尿病が改善するケースがあります。

糖尿病の治療

治療には食事療法、運動療法、薬物療法があり、3つを上手く組み合わせることが大切です。

食事療法の基本は、適正なエネルギー摂取量を超えないことと、栄養バランスを考えて摂取することです。ひとりではなかなか難しいため、医師や栄養士のアドバイスを受けながら取り組んでいくのがお勧めです。特に、高血圧や脂質異常症、腎症などがある場合、塩分や脂質、蛋白質の摂取量も考慮しなければなりませんので、注意が必要です。

運動療法は、筋が使われたり、筋肉の量が増えたり、内臓の脂肪細胞が小さくなったりすることで、さまざまな良い効果が期待できます。たとえば、血糖のマネジメントが改善したり、インスリンが作用しやすくなったり、脂質異常症が改善したり、血圧が改善したり、心肺機能が改善したりします。運動はなるべく毎日、少なくとも週に3~5回行うことが勧められています。運動の内容は、全身を使う有酸素運動で、「ややきつい」と感じる強度で、1回20~60分間、1週間に合計150分以上が勧められています。また、合わせて、筋肉に負荷をかける動きを繰り返し行う運動(レジスタンス運動)を週に2~3回行うことも勧められています。運動療法を行うべきでなかったり、運動療法の内容に注意が必要であったりすることがありますので、医師に相談しながら進めていきましょう。

糖尿病の薬物療法は、大きく分けて、血糖を下げる内服薬(血糖降下薬)とインスリン注射の2つがあります。血糖降下薬は、2型糖尿病で食事療法と運動療法をしばらく行っても血糖のマネジメントがうまくいかない方に投与されることが多いです。インスリン注射は、1型糖尿病の方や、血糖降下薬を投与されても血糖のマネジメントがうまくいかない方、膵臓からのインスリン分泌量が少ない方に行われることが多いです。

糖尿病の治療においては、低血糖に注意する必要があります。低血糖とは血液中のブドウ糖の濃度が低くなった状態(血糖値70mg/dL未満)のことで、「冷や汗が出る」「気分が悪くなる、ふらつく、意識が遠のく」「頭痛がする」「寒気がする」「動悸がする」「手足が震える」「目がかすむ」といった症状が出ます。重症化すると命にかかわることがあります。低血糖の症状を感じたら、すぐにブドウ糖10gあるいは砂糖20gを摂取しましょう。同等の糖分を含んだ飲み物でも構いません。低血糖はいつどこで起こるか分かりませんので、常にブドウ糖を携帯し、家族や周りの人にも対処法を覚えておいてもらうことが大切です。

当院の特色

当院の常勤内科医の多くが糖尿病診療を熟知していることに加えて、神戸大学 糖尿病・内分泌内科から派遣していただいている非常勤医師が専門的診療を行ったりコンサルトを行ったりする体制を整えております。また、糖尿病教育入院の実施や、管理栄養士による食事療法のアドバイス、糖尿病について色々と学べる外来糖尿病教室の開催なども行っております。(注:外来糖尿病教室は、コロナ禍につき現在お休み中です)

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