慢性腎臓病とは

慢性腎臓病とは

慢性腎臓病とは、なんらかの原因で、腎臓がゆっくり悪くなっていく病気です。英語ではchronic kidney diseaseと呼ばれ、CKDと略されています。慢性腎臓病の患者さまは年々増えており、新たな国民病と言われています。原因はさまざまで、糖尿病や高血圧、脂質異常症、慢性腎炎症候群、生まれつきの腎・尿路形成異常などが挙げられます。症状はかなり進行するまで目立ちませんが、やがてむくみや貧血が起こるようになり、最終的に肺水腫(肺に水がたまった状態)や心不全などで命にかかわる状態になります。対応としては、定期的に診察や検査を受けながら、生活習慣の改善や食事内容の変更、原因となっている病気の治療を行い、慢性腎臓病がなるべく進行しないようにすることが大切です。進行してしまったら、腎臓が働かないことで起こるさまざまな異常に対する治療を行っていきます。具体的には、血液透析や腹膜透析、腎移植、貧血治療などが挙げられます。

慢性腎臓病の原因

慢性腎臓病とは、以下のような原因で腎臓がゆっくり悪くなっていく病気です。

  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 脂質異常症(血液中の脂質の値が基準値から外れた状態のことで、動脈硬化を促進させる可能性があります。主に、LDLコレステロールや中性脂肪が高い、HDLコレステロールが低い、といった異常があります)
  • 慢性腎炎症候群(腎臓の糸球体というろ過フィルターに炎症が起こり続け、腎臓が傷んでしまい、血液中の蛋白質や赤血球が尿に混ざってしまう状態のことです)
  • 生まれつきの腎・尿路形成異常
  • 肥満
  • 喫煙
  • 加齢

慢性腎臓病の症状

慢性腎臓病の症状は、病気の進み具合によってさまざまです。病気の進み具合は、腎臓の働きを表す推算糸球体ろ過量によって、ステージ1、2、3、4、5と表現されます。推算糸球体ろ過量とは、英語でestimated glomerular filtration rateと呼ばれ、eGFRと略されています。健康診断でも測定することのある血清クレアチニン値と、年齢、性別から計算され、腎臓が血液中の老廃物をどれくらい尿へ排泄することができるかを表したものです。以下に、ステージごとの症状の例を示します。

ステージ eGFR(ml/分/m2 症状(例)
90以上  自覚症状なし
60~89  自覚症状なし、場合により血尿
30~59  血尿に加え、貧血、夜間頻尿、こむらがえり
15~29  上記に加え、すぐ疲れる、むくみ
15以下  上記に加え、頭痛、食欲不振、呼吸困難

もう少し詳しく解説します。慢性腎臓病は、腎臓の働きがかなり低下しないと目立った症状が出てきません。ステージ2までは、血液検査や尿検査で異常が指摘される程度です。ただし、尿に蛋白質が出てしまう病気であるネフローゼ症候群では、むくみが出ることがあります。

ステージ3からは、身体の水分や電解質のバランスがおかしくなっていき、こむらがえりやむくみが現れ始めます。また、尿を作るのが日中だけでは追いつかなくなり、夜にもたくさん作るようになることで、夜間頻尿となります。腎臓はエリスロポエチンという血液を作るためのホルモンを出すのですが、この量が減ってしまい、貧血となり、顔色が悪くなったり、疲れやすくなったりします。

ステージ4からは、血液中の毒素が溜まりがちになることで、頭痛や食欲不振、吐き気などが現れ始めます。身体の水分や電解質のバランスが一段とおかしくなり、高度なむくみに加え、不整脈や肺水腫、心不全などが起こるようになります。その結果、呼吸困難となったり、命にかかわる状態になったりします。

慢性腎臓病の検査

慢性腎臓病の検査は、主に血液検査と尿検査です。血液検査では、クレアチニンの値などを測定し、腎臓の働き具合を調べます。クレアチニンとは筋肉に含まれる蛋白質の老廃物で、腎臓の働きが悪くなると、尿から排出されにくくなって血液中に溜まり、クレアチニンの値は高くなります。ただし、初期の慢性腎臓病ではクレアチニンの値が必ずしも高くならないため、推算糸球体ろ過量も参考にします。推算糸球体ろ過量とは、英語でestimated glomerular filtration rateと呼ばれ、eGFRと略されています。クレアチニンの値と、年齢、性別から計算され、腎臓が血液中の老廃物をどれくらい尿へ排泄することができるかを表します。

尿検査では、主に尿蛋白や血尿について調べます。蛋白質や赤血球は身体にとって大切なものですから、普段はほとんど尿に排出されません。しかし、腎臓の働きが悪くなると、ろ過に際して蛋白質や赤血球が素通りし、尿に排出されてしまうようになります。

診察と血液検査、尿検査だけでは、慢性腎臓病を引き起こしている原因が分からないことがあります。そこで、CT検査や超音波検査を行って腎臓の大きさや形を評価したり、腎生検を行って腎臓の組織を顕微鏡で観察したりすることもあります。腎生検とは、針で腎臓の一部を採取することを言います。

慢性腎臓病の治療

慢性腎臓病の治療としては、まず、慢性腎臓病を引き起こしている原因に対する治療が挙げられます。原因には糖尿病や、高血圧、脂質異常症、慢性腎炎症候群、肥満、喫煙などがありますので、それぞれにきちんと対処していきます。この対処には食事療法も含まれますが、慢性腎臓病の進み具合によっては、さらなる食事療法を行います。具体的には、弱ってしまった腎臓に負担をかけないよう蛋白制限を行ったり、蛋白制限を行った分だけ糖質や脂質でカロリーを補ったり、身体の水分や電解質のバランスをとるために塩分・カリウム・リンの制限を行ったりします。制限だけでは不十分な場合、カリウム・リンの吸着薬を内服したり、カルシウムを増やす薬を内服したりします。

ステージ3以降になり、貧血が起こり始めたら、血液を作るためのホルモンであるエリスロポエチンを補充するための治療を行ったり、赤血球の材料となる鉄分を補充したりします。これらの治療を行ってもステージが進んでいってしまい、血液中の毒素が溜まりすぎたり、身体の水分や電解質のバランスが一段とおかしくなったりしてきたら、人工透析や腎移植の準備を開始します。

人工透析には、主に血液透析と腹膜透析があります。血液透析とは、血液を一旦身体の外に出し、器械で血液中の老廃物や水分を減らし、身体に戻すという治療です(図1)。たくさんの血液を身体から出し入れできるようにするために、シャント手術を受けたり、バスキュラーアクセスカテーテルを血管に留置したりする必要があります(図2)。シャントとは動脈と静脈を直接つなぎ合わせた血管のことで、静脈に動脈の血液が流れ込むことで静脈が膨らみ、太い針が刺しやすくなったり、たくさんの血液を出し入れできるようになったりします。また、血液透析は、透析施設に週に2~3回通い、1回につき4時間ほどかけて行うのが一般的です。

図1:血液透析のイメージです。この図では左腕にシャントがあり、ここからたくさんの血液を出し入れしています。

図2:バスキュラーアクセスカテーテルの留置イメージです。太い静脈に太い管を入れることで、たくさんの血液を出し入れできるようにします。

腹膜透析とは、お腹の中に透析液を入れ、透析液に体の老廃物や水分を吸収させたのち、透析液を回収するという治療です(図3)。透析液を出し入れできるようにするために、カテーテルをお腹に埋め込む手術を行う必要があります。自宅でできる治療なので、通院は月に1回ほどで済みます。血液透析と比べてマイルドな透析であり、身体への負担が少ないです。一方で、水分をどれぐらい減らすことができるか読みづらく、すでに呼吸困難や命にかかわる状態になっている方には血液透析を行うほうがよいことがあります。

図3:腹膜透析のイメージです。お腹に埋め込まれたカテーテルを用いて、透析液を出し入れしています。

腎移植とは、ほかの方の腎臓を手術でもらう治療です。手術は大がかりですが、術後問題なく経過すれば、人工透析のような時間的制約はほとんどありません。腎移植には、親族から腎臓をもらう生体腎移植と、亡くなった方から腎臓をもらう献腎移植があります。献腎移植の場合、日本臓器移植ネットワークに登録した上で待機する必要があり、平均して14年以上かかるというデータがあります。また、拒絶反応を抑えるために免疫抑制薬を飲み続けなければなりませんが、副作用として感染症にかかりやすくなるなどが挙げられます。

当院の特色

当院は慢性腎臓病の診療にかなり力をいれており、特に診療の幅広さには自負があります。まず、慢性腎臓病の診療に長年携わっている常勤医師複数名に加え、神戸大学腎臓内科からの外来応援があり、慢性腎臓病の初期から末期すべてに対する診察や治療を行っております。また、コメディカルによる生活改善指導や食事療法も行っております。人工透析の導入にあたっては、常勤内科医と常勤外科医がコラボレーションし、患者さまひとりひとりに合わせた導入方法を選択しています。常勤外科医は長年ブラッドアクセスの作成や管理に携わっており、シャント手術やシャントの経皮的血管拡張術(図4)などを年間200件以上行っております。透析室にはテレビ付きの透析ベッドが15床、病棟には個人透析用装置が2台あり、入院中の透析患者さまが安全かつ快適に人工透析を行っていただけるよう努めております(図5)。また、病院のすぐそばに光寿会クリニックという透析サテライト施設があり、テレビ付きの透析ベッド75床体制で、年間約35,000件の血液透析と腹膜透析を行っております。この透析件数の多さから、大学から治験や研究への協力をご依頼いただけることがあり、積極的に取り組んでおります。泌尿器科では、兵庫医科大学 腎移植センター 特別招聘教授を兼任していたことのある市川靖二医師が部長として常勤しており、腎移植後の患者さまのフォローアップを行う体制が整っております。高齢や歩行困難などで透析施設への通院が難しくなった透析患者さまに対して、長期入院が可能な療養病床のご用意もあります。

図4:X線を用いた画像で、シャントの経皮的血管拡張術の様子です。細くなってしまった血管を、風船のようなものを使って膨らませています。

図5:当院の透析室です。テレビ付きの透析ベッドが15床あります。

以上のように、当院は慢性腎臓病の患者さまのさまざまな状態を専門的に診療できる体制が整っておりますので、幅広くご相談に乗らせていただければ幸いです。

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